【メンタル対策】自己強化サイクルと投資家心理
ジョージ・ソロスの反射理論
世界最大のヘッジファンドであるクオンタム・ファンドを率い「イングランド銀行を破綻させた男」として有名なジョージ・ソロス氏の相場理論の1つに、「反射理論(Reflexivity Theory)」と呼ばれるものがあります。
これは、相場を動かす原動力は「ファンダメンタルズから生じる潜在トレンド」と、それをベースにして生まれた「市場参加者の期待のバイアス」であるというものです。
まず、土台にマクロ面やミクロ面における財務状況や経済状況があって、そこに市場参加者の期待が混じった心理が影響する、というのが、この理論の根幹です。 そして、この反射理論の過程では「自己強化サイクル」というものが生まれます。
自己強化サイクルとは、トレンドが長く続けば続くほど期待が強くなっていき、それが次第に信念へと変わり、これらが再帰的に作用するため簡単にはトレンドの修正が起こらなくなってしまう、というものです。
トレンドと自己強化サイクル
自己強化サイクルの流れは、次のようなものです。
まず、多くの人には不明瞭な段階でトレンドが発生します。(①)
そのうち、そのトレンドを発見した市場参加者によって、自己強化プロセスが働き出します。(②)
その後、小さな調整や方向性のテストが繰り返されますが、最終的にトレンドが確認されます。(③)
すると、そのトレンドに対する信頼感が増幅されて、さらにトレンドが続きます。(④)
これを繰り返していくことでどんどんトレンドが過熱していき、その結果、現実であるファンダメンタルズとのギャップを顧みなくなり、クライマックス的な上昇や下落が起こって、相場がオーバーシュートします。(⑤)
すると今度は、行き過ぎへの強い反省から反対方向への自己強化プロセスが始まるというもので、バブルを彷彿とさせる理論です。(⑥)
①多くの人の目には不明瞭だが、トレンドが発生する
②トレンドを発見した投資家により自己強化プロセスが動き出す
③方向性のテストが何回か繰り返されるうち、信頼感が増幅される
④その結果、現実と認識とのギャップを顧みなくなる
⑤クライマックス的な上昇または下落が起こる
⑥行き過ぎへの強い反省から反対方向への自己強化プロセスが始まる
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テクニカル分析がうまく機能しない時などは、極端に買われ過ぎたり売られ過ぎたりしていることが多いものですが、短期的にせよ長期的にせよ、一種の自己強化サイクルが生まれていると考えることができます。
そして、この自己強化サイクルが働いている時は、逆張りをしようとすると失敗してしまい、順張りのテクニカル指標では説明できないほど相場が一方向に行き過ぎたりします。いくらしっかりテクニカル分析やファンダメンタルズ分析を行っても、それはあくまで数値上のことです。
このように、人間の心理状態まで含めて考えないと、失敗につながってしまうこともありますから、注意しましょう。
自己強化サイクルの仕組み
FX会社などが提供しているニュースや情報などでは、経済指標発表前後に市場コンセンサスが発表されたり、要人やアナリストのコメントが流れたりしますので、こういった情報からうまく市場参加者の心理状態をくみ出す必要があることも忘れないでおきましょう。
ちなみに、ジョージソロスはもともと哲学者を目指していたこともあって、多くの哲学的な理論を提唱しています。
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