【相関係数】ヘッジファンドも使っているFXや株、商品との相関関係
相関係数とは何かを解説
連動性が数値でわかる
「ドル円はけっこう上がってるのに、逆にユーロ円の方は下がってる・・・」、「ポンド円の動きがやけに激しすぎな」というように、相場のトレンドが一方向でも通貨ペアによって動きの異なることがあります。
トレードしていると感覚でしか分からないのですが、このような通貨ごとの方向性を数値で表すことができます。それを「相関係数」と言い、ある通貨と別のある通貨の動きの同期率が数値になっています。
例えば、ドルが上がるとユーロが上がりづらくなることがありますが、それがどの程度なのか、数値で表すことができるのです。相関係数とは、2つのデータ列の間の相関(類似性の度合い)を示す統計学的指標で、-1から1の間の実数値を取ります。
相関係数が、1に近いときは2つのデータ列には正の相関(同じ動き)があり、-1に近ければ負の相関(逆の動き)、そして0に近いときは元のデータとの相関は弱い(関連性がない)ということを表します。
日常生活に見られる相関関係
正・負・無相関に分かれる
数値だけを追っていくと分かりにくいと思うので、日常生活の例を挙げて相関係数を見てみます。
下図は、正の相関、負の相関、無相関の3つを「コンビニでの買い物」を例に散布図で表したものです。正の相関と負の相関は飲み物と気温の関係、無相関は雑誌と気温の関係が散布図になっています。
正の相関(0 ~ +1)
X軸の気温が高くなるにつれ、Y軸の清涼飲料水の売り上げが増えていることが分かります。
冷たい飲み物は、気温が上がれば売り上げが増えていくので、それを散布図で表すと右肩上がりの形となり、気温の上昇と清涼飲料水の売り上げが比例していることが表わされています。
負の相関(-1 ~ 0)
X軸の気温が高くなるにつれ、Y軸のホット飲料の売り上げが減っていることが分かります。
特別な理由がなければ、真夏にわざわざホット飲料を飲む人はいませんから、熱い飲み物は気温が上がると売り上げが減っていきます。それを散布図で表すと右肩下がりの形となり、気温の上昇とホット飲料の売り上げは比例の反対であることを表しています。
無相関(0)
今度は飲み物ではなく、雑誌の売り上げと気温の関係です。
「今日は暑いから雑誌でも読もう」などという人がいないように、雑誌の売り上げと気温には関係がないことを表しています。散布図で見ると、バラバラで特に方向感は見られない状態です。
クロス円の相関係数と特徴
ドル円とクロス円は正の相関関係
相関係数は、計算元となる期間や地合いによってかなり数値が変わるのですが、傾向としては下記のような数値になることが多いです。
通貨ペア | USD/JPY | EUR/JPY | GBP/JPY | AUD/JPY | CAD/JPY | NZD/JPY | CHF/JPY | ZAR/JPY |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
USD/JPY | 1.00 | 0.92 | 0.95 | 0.90 | 0.95 | 0.92 | 0.92 | 0.93 |
EUR/JPY | 1.00 | 0.98 | 0.99 | 0.98 | 0.98 | 0.99 | 0.97 | |
GBP/JPY | 1.00 | 0.97 | 0.98 | 0.98 | 0.97 | 0.96 | ||
AUD/JPY | 1.00 | 0.97 | 0.98 | 0.98 | 0.97 | |||
CAD/JPY | 1.00 | 0.98 | 0.97 | 0.98 | ||||
NZD/JPY | 1.00 | 0.98 | 0.96 | |||||
CHF/JPY | 1.00 | 0.96 | ||||||
ZAR/JPY | 1.00 |
0.7~1.0・・・・・強い相関がある(相関関係)
0.2~0.7・・・・・やや相関がある
-0.2~0.2・・・・ほとんど相関なし(無相関)
-0.7~-0.2・・・やや逆相関がある
-1.0~-0.7・・・強い逆相関がある(逆相関)
上の表の、ドル円の行を見てください。
数値を確認すると、0.90~1.00までの数値が入っていて、ドル円とポンド円、カナダドル円は相関係数0.95と1.00に近く、連動性が高いことが分かります。
逆に言えば、ドル円とユーロ円(0.92)、豪ドル円(0.90)、NZドル円(0.92)、スイスフラン円(0.92)の組み合わせは相関関係がある程度弱いことが示されています。
普段から、「ドル円とユーロ円はちょっと違う動きをするな」とか「リスク回避でスイスフランが買われているのかな?」という場面を見かけることがあると思いますが、数値を比較すればユーロやスイスフランより豪ドルとの相関関係の方がさらに弱いことが分かります。
豪ドル円の動きについては、ドルストレートの豪ドルドルが関わってくる(相関係数がマイナス)ので、ドル円と逆の動きになりやすく、ドル円が下がっても豪ドル円が上がることがあります(またはその逆)。
そうすると、もし分散投資するのであれば、ドル円と豪ドルにポジションを分ければ良いように見えます。
確かに、ボックス圏や緩やかな変動時には十分なリスクヘッジになるのですが、実際には急激な変動の際にはすべての通貨が円に対して弱くなってしまうので、一年に1~3度ある急激な円高に耐えられません。
つまり、ドル円とクロス円で分散投資してもほとんど意味がないのです。
ドルストレートの相関係数と特徴
ドルストレートとは逆相関
ではどうすればよいかと言えば、「もっと相関関係が弱い通貨ペア=相関関係が-1に近い通貨ペア」を探せば良いのです。
逆の動きをする通貨同士を組み合わせ投資を行えばリスクヘッジになり、一方的に損が膨らむリスクを回避でき、それでいてスワップポイントも安心してもらい続けることができるからです。
この逆相関関係のある通貨ペアを保有し続ける方法を利用した通貨取引は、統計学や金融工学を基にヘッジファンドでも実際に使われている投資手法です。値動きが似ている通貨ペアが相関関係、逆に反対の値動きをするのが逆相関関係の通貨ペアなので、一方が下がってももう一方が上がってリスクが分散され、リスクヘッジになります。
この逆相関を最も組みやすいのが、ドル円とドルストレート、あるいはドルストレート同士の組み合わせで、スイスフランがリスクヘッジとなることが多いです。
ドルストレートは単位がpipsで表されているので、最初は手掛けづらいと思うのですが、結局ドル円の銭の考え方とそれほど変わらないです。
頭で考えるよりも、デモトレードや最小単位で試しにポジションを持ってみると、それが分かるはずです。
通貨ペア | USD/JPY | EUR/USD | EUR/GBP | USD/CHF |
---|---|---|---|---|
USD/JPY | 1.00 | 0.74 | -0.47 | -0.58 |
EUR/USD | 1.00 | -0.46 | -0.94 | |
EUR/GBP | 1.00 | -0.82 | ||
USD/CHF | 1.00 |
逆相関の例
ドル円とユーロドル
相関係数 0.74
ドル円とクロス円の組み合わせよりは良い。
ただ、正の相関なのでリスクヘッジには物足りない。
ユーロドルとドルスイス
相関係数 -0.94
-1に近いので、リスクヘッジになっていることがわかる。
ユーロポンドとドルスイス
相関係数 -0.82
ユーロドルとドルスイスほどではないが、十分リスクヘッジになっている。この水準の組み合わせは他にもあり、探してみると意外な発見もあって面白い。
いずれの場合も、為替変動をリスクヘッジしつつ、プラススワップの付く組み合わせで、特にドルスイス(USD/CHF)は様々な通貨でのリスクヘッジになるでしょう。
強い逆相関関係にあるEUR/USDとUSD/CHFのチャート比較
相関関係をチェックしてみよう
複数のサイトで確認可能
上記で紹介した、FX通貨ペア別の相関係数は、セントラル短資FXの通貨ペア別相関係数で手軽にチェックできます。
今回は、通貨に関する相関係数に注目しましたが、ほかにも株式市場や商品相場との比較もできますし、そうすることでトレードの範囲も広がります。
通貨や株式、商品市場など幅広く相関係数を比較したい場合は、サヤトレ相関係数一覧表を利用してみるとよいでしょう。
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