【IMM通貨先物ポジション】ヘッジファンドの仕掛けを先取りできる
ヘッジファンドのポジションが見れる
火曜日までの分が週末に発表
為替の1日の取引高は、600兆円と言われています。東証一部の1日の平均売買代金が3兆円なので、それに比べるとものすごい大きさ市場だということが分かります。
ところが、その内訳を見てみると、貿易取引など実需の取引はたった10%程度しかなく、為替相場は残りの90%を占める投機筋やヘッジファンドが動かしている、と言われています。そのため、投機筋やヘッジファンドの動向を知ることができれば、トレードの際に大きなヒントとなります。
もちろん、銀行間による資金取引やヘッジのためのスワップ取引など、為替差益を得る目的ではない経路で取引額が膨れ上がっていることは否めません。しかし、それらがレート変動目的でないならばほとんどいないのと一緒で、投機筋の動向が重要なのは変わらないでしょう。
種類 | 内容 | 参加者 | |
---|---|---|---|
実需 | 経常取引 | 貿易取引 | 企業 |
貿易外取引 (外貨両替・送金、運賃、保険料) | 企業、個人 | ||
資本取引 | 投資取引 (直接投資や外貨・証券投資) | 機関投資家、企業、個人 | |
投機 | 実需以外の為替取引 | 機関投資家やヘッジファンド、個人 |
週末に火曜日時点のものが公表
この投機筋のポジションは、全米先物取引委員会(CFTC)が公開を義務付けており、毎週金曜日の取引終了後に買い(ロング)と売り(ショート)の建て玉枚数を公表しています。数値は、その週の火曜日時点のものなので、3営業日ほど前のものになってしまうのですが、トレンドを把握する意味ではそれほど影響はないです。
為替は、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)にある国際通貨市場のIMM(International Monetary Market)のポジションが公表、世界中の投資家がこれを見て投機筋の動きをチェックして行動しており、市場全体の流れを表す指標と言えます。
ただし、大口のヘッジファンドなどは、手口が公開されることを避けるため通貨先物を利用しないと言われています。そのため、必ずしも投機筋の動向が反映されるとは限らないので、あくまで参考程度に使ってみてください。
用語解説
種類 | 特徴 |
---|---|
実需 | 輸出入や資本取引、株式の売買や債券の売買などのため、為替取引を行っている。 |
機関投資家 | 保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問会社、年金基金など。 |
ヘッジファンド | 先物取引や信用取引などを積極的に活用、レバレッジをかけて大きな金額を短期的に取引する、投機筋の一種。 |
個人投資家 | 機関投資家の対語で、個人の市場参加者。 |
IMM通貨先物ポジションの確認方法
グラフで見ると楽
オリジナルのデータは、CFTCのHistorical Compressedで確認することができます。
データをダウンロードしたのち、円相場であれば「JAPANESE YEN – CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE」の項目にある「Dealer_Positions_Long_All」と「Dealer_Positions_Short_All」でIMM通貨先物ポジション数が分かります。
他にも、ユーロ(EURO FX – CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE)やポンド(BRITISH POUND STERLING – CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE)、豪ドル「AUSTRALIAN DOLLAR – CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE」、NYダウ先物(DOW JONES U.S. REAL ESTATE IDX – CHICAGO BOARD OF TRADE)や日経平均先物(NIKKEI STOCK AVERAGE – CHICAGO MERCANTILE EXCHANGE)も掲載されています。
ただ、数値が羅列されているだけなので見づらく、グラフなどにしてまとめた方が分かりやすいです。
国内では、外為どっとコム(Excelデータ)や第一商品、OANDAがグラフ化してくれているので見やすいでしょう。
なお、通常のグラフ化だと円ロングがプラス側にくるため逆に考えないといけないのでややこしいのですが、FOREX WATCHERはグラフ化にあたってロングとショートを逆にしているので分かりやすいです。
外為どっとコムのIMM通貨先物ポジションチャート
セントラル短資FXのIMM通貨先物ポジションチャート
第一商品のIMM通貨先物ポジションチャート
OANDAのIMM通貨先物ポジションチャート
FOREX WATCHERのIMM通貨先物ポジションチャート
円ポジションと相場の見方
円ロングとは円買いのこと
ここでは、外為どっとコムが提供しているMM通貨先物ポジションのチャートを例に、見方を解説します。
チャートの赤い折れ線はドル円レート、青い縦棒がIMM通貨先物ポジションを表しています。
青い縦棒は円買いポジションなのですが、左側にあるメモリを見ると上側はマイナスになっているため、0より上にあった場合は円買いがマイナスなので円売り優勢ということになります。
円売りは円安、円買いは円高と同じ意味なので、青い縦棒グラフが上に伸びれば円安優勢、下に下がると円高優勢です。
動きを見ると、赤い折れ線と青い縦棒が同じ方向に動いており、投機筋のポジションと同じ方向にドル円レートが推移していて、投機筋の動向が為替レートへ与える影響の大きさが伺えます。
このチャートからは、大体円売りが-100000くらいまで膨らむと相場が反転しているのが見て取れるため、「もうすぐ円安は一服して、いったん調整入りするのではないか」ということが予想できます。
ユーロやポンド、豪ドルの見方
ロングが増えると上昇
ユーロのIMM通貨先物ポジション
先ほどの円チャートとは異なり、ユーロやポンド、豪ドルの左側のメモリは0から上がプラスになっているので、ロングが多ければ縦棒は上方向、ショートが多ければ縦棒は下側に伸びると見ます。
このチャートの場合、真ん中付近でいったんピークを付けたのち、ロングポジションの解消とともにユーロ相場が下がっていることが分かります。
しかし、今度はユーロショートが過去付けたピーク付近まで増えているので、「反発あるいは下げ止まる時期が近い」と判断できます。
ポンドのIMM通貨先物ポジション
英EU離脱決定以降、ポンドショート優勢の地合いが続いています。
しかし、売り込まれたところでは反発も強く、いったん買戻しに転じるとしばらくはショートカバーが入って下がりにくくなっていると思われます。
とはいえ、ポンドを積極的に買う動きは少なく、ロングがプラスになる時期は短くなり、その結果上値も限定的になっていることが分かります。
豪ドルのIMM通貨先物ポジション
元々は高金利通貨なので、ショート過多になることはほぼありませんでした。
しかし、利下げが続いてきたことでチャート真ん中付近でドルとの金利差が逆転、ロングポジションの解消が続き、ついにショート優勢となってしまいました。
直近では追加利下げ懸念が台頭、ショートポジションの解消が見込まれなければじり安の展開が予想されます。
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